電子メールは記録か否か。キャップストーン・アプローチをご存知ですか?

 令和5年7月3日14時、大阪市大阪港湾局営業推進室販売促進課は、以下のような発表を行っています。

「大阪港湾局販売促進課において、令和元年度及び令和2年度に実施したIR用地にかかる鑑定評価書の作成過程におけるメール及び添付文書等(以下「メール資料」という。)については、これまで市会の質疑や情報公開請求に対し不存在として対応してきましたが、令和54月に外付ハードディスク等内に保存されていることが判明しました。
 このたび、外付ハードディスク等内に保存されていたメール資料の内容を確認した結果、情報公開の対象文書として確定しましたので、大阪市情報公開条例に基づき、改めて公開します」

 同発表の中では、「ネットワークサーバー内のメール資料については保存期間が1年未満であり、メール資料の取得から1年以上が経過していたことから公文書には該当しないと考え、ネットワークサーバーからこれらのメール資料を削除しました」とあることから、電子メールについては送受信から1年を経過すれば削除してよいという運用をしていたことが伺えます。

 一方、民間企業では米国訴訟のe-Discovery対応のため、送受信から5年経過したメールを全て削除している例もあります。

キャップストーン・アプローチ

 そんな中、別の考え方のキャップストーン・アプローチ(Capstone Approach)について紹介いたします。ちなみにキャップストーンとは、ピラミッドの頂上部に置かれた四角錐状の石を指します。

 この方法は2013年に国立公文書記録管理局(NARA)が提唱した方法で、オバマ政権時代にメールを自動的に保存するシステムを導入しています。

 Collabwareのブログ”What is the Capstone Approach? + 5 Benefits for Government Email”によれば、キャップストーン アプローチでは、次のように電子メール管理します。

・政府機関に対し、重要な電子メールを受信する可能性が高い人 (組織幹部など) の受信箱を「キャップストーン アカウント」として指定することを要求します。このアカウントの受信トレイ内の電子メールはNARAに転送され、永久保存されます。組織内の残りの電子メール アカウントは一時的なものとして一定期間保持された後、組織によって破棄されます。

 この方式の一番の特徴は、「重要な電子メール記録が誤って、あるいは恣意的に削除される可能性は低くなる」ことにあると感じましたが、皆さんはいかがでしょうか?

■電子メールの保管期間1年間は適切か?

 電子メールを保管しておくことで、メリットとデメリットがあります。

 ①デメリットは、

 ・訴訟における調査対象範囲が拡がる

 ・情報公開の範囲が拡がる

  などで、コストが嵩むこと。

 ②メリットは、

 ・記録として取出し漏れていても発見できる。

 ・通信記録として一貫した証跡になるので、相手先あるいは第三者から見ても信頼性が高まる。

 電子メールの送受信箱から必要なメールを取出し、場合によっては紙に印刷し記録として残すという方法は、従来よくやられてきた方法です。

 しかし、相手先や第三者から見れば、恣意的に都合のよいものだけを残しているとも受け取れます。また、削除してしまっては身の潔白も証明できない状態となります。

 キャップストーン・アプローチとまでは言いませんが、保管期間の延長を考えていく必要があるように思えて仕方がありません。

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