文書を管理するのではなく、文書で業務をマネジメントする時代へ ――ツミアゲ式フォルダ管理から脱却し、誰でも業務を引き継げる仕組みづくりを

▶「分類すれば管理できる」と思っていませんか?

 複数の職員・社員で業務を分担している現場では、作成した文書を持ち寄って分類し、フォルダ構成を決めていくことがよくあります。いわゆる「ツミアゲ式」フォルダ管理です。現場の実情に合わせて柔軟に対応できるという利点はあるものの、次第に課題も見えてきます。

・前任者でないとどこに何があるかわからない・同じような文書が複数の場所に分散している・フォルダ構成の議論ばかりで、業務そのものが進まない 分類することが目的化してしまい、肝心の業務が見えなくなっていないでしょうか。

▶次のステップは「タスクの見える化」

 分類を整えるだけでは業務の本質は改善されません。本当に必要なのは、文書を生み出す業務タスクの関係性を明らかにすることです。

・この文書は、どの業務プロセスの中で作られたのか・前後にどんなタスクがあり、どのように引き継がれるべきか・重要なチェックポイントはどこか このようにタスク間のつながりを明確にすることで、業務の流れを可視化し、抜け・漏れ・重複といったリスクも管理しやすくなります。

▶ チェック項目、チェック数を増やす前に考えるべきこと

 リスク対策のためにチェックを行うことは重要ですが、「チェックばかり増える構造」になっていないかを見直す必要があります。形式的なチェックが増える一方で、本当に見るべきタスクが抜けていると、いずれ不正や業務の失敗を招くことになりかねません。大切なのは、JSOXでもおなじみのように「チェックを増やすこと」自体が目的ではないということです。どこをどうチェックすべきかを、業務の流れやリスクの所在に基づいて判断し、適切にコントロールすることこそが求められています。

▶ フォルダ構成を整えるだけでは運用できない

 たとえ業務を見直しても、それを単に「フォルダ体系に落とし込んだからOK」では、再現性のある運用にはなりません。

・フォルダ構成に沿って保存しただけで完了とみなされる・業務の流れが見えないため、引き継ぎが困難になる・実際の動きと文書の関係が乖離していく業務の進行と文書作成・保存が連動する仕組みが求められます。

▶ Excel台帳でも、できることはある

ITツールがすぐに導入できない場合でも、Excelなどで案件管理台帳を作成することで対応可能です。

・縦軸に案件名や案件番号・横軸に業務タスクを時系列で配置・各タスクの担当・期日・文書保存場所を記録
こうした台帳を用いれば、業務と文書の関係を可視化しながら、引き継ぎや進捗管理がしやすくなります。

▶ ワークフローを使えば、業務の流れをそのまま管理できる

 ワークフローシステムが導入できる環境では、業務フローそのものを設計し、案件単位で管理することが可能になります。

・案件がスタートすると、必要なタスクが自動通知される・チェックポイントや保存タイミングも明確に定義できる・タスクの完了履歴が残るため、監査や説明責任にも対応しやすい属人性の高い文書管理から、業務と情報を一体的に運用する仕組みへの転換です。

▶文書は「管理するもの」から「業務を動かすもの」へ

 このような活動は現場まかせで実現できるものではありません。文書情報マネージャーがリードしてこそ実現が可能です。