3-1.トップダウンで進めるか、ボトムアップで進めるか

文書情報管理を始めるきっかけは次の二つに大きく分けられます。

一つは、会社で情報漏えいや訴訟などの事件、事故があった場合。あるいはトップダウンでペーパーレスの指示が降りてきたケース。

もう一つは文書情報管理に携わる人が現状の問題を認識し、改善の必要性を感じて取組む、ボトムアップで進めるケースです。

ボトムアップで進めるケースでは、いくつかの注意点が発生します。
文書情報管理を進める上で予算の確保をするために、トップへの承認を得るプロセスが必要となります。文書情報管理を進めたいと考える方は多くいますが、この壁をなかなか乗り越えられず、挫折をしてしまうことが多いのです。

この時に重要なことは何のために文書情報管理をするのか目的を明確にすることです。

 

3-2.文書情報管理の目的を明確にする

トップダウンの場合、比較的目的が明確な場合が多い半面、手段と目的を間違えてとらえられるケースが多く見受けられます。例えば、「ペーパーレス化の推進」や「電子化の推進」が目的そのものになっているケースがよくありますが、これはあくまで手段です。

一方で、ボトムアップの場合は、トップの承認をもらうために、明確な目的とゴールイメージ、それに伴う費用となると投資対効果を明示する必要があります。しかし、文書情報管理においては、その性格上、投資対効果が示しにくく、だからこそ、現状の文書情報管理が会社に対し将来的にどのような影響を与えるのか、トップに正しく理解してもらうことがとても大切です。

ありがちなのは、文書情報管理を紙文書の「お片付け」程度にとらえられているパターンです。その程度のことをなぜ自分たちで解決できないのかと考えられて、ほとんど投資されない話をという話をよく耳にします。しかしそうでしょうか?

組織である限り、文書情報が不必要な仕事は存在しません。つまり文書情報は仕事をしていく上でのすべて基盤であり、文書情報管理は重要なインフラづくりなのです(図3-1)。

図3-1 文書情報管理の目的

 

3-3.文書情報管理が目指すゴールとは?

文書情報管理に求められていることを一言で言えば、「必要な時に必要な文書を権限がある人がいつでもどこでも即時に取り出すことができること」です。

しかし、現実はどうでしょう。
情報そのものが属人化されてはいませんか?
文書情報管理を実施する上で一番大事なことは情報そのものが本来「企業の資産」であることを認識することです。まず、属人管理を排除して、組織での管理を実施すべきです。

目指すのは、文書を探す時間が短縮され、業務効率が上がり、その結果、働いている人が楽になることです。これはまさに今盛んに叫ばれている、働き方改革を実現するための「生産性の向上」に他なりません。

図3-2 文書管理が目指すゴール

 

3-4.推進体制の構築

推進体制を作り上げるうえで重要なのは、自部門であれば部門長に、全社であれば、管理部門の役員に、推進体制のオーナーを担ってもらうことです。

現場のメンバーは本来業務を持っていて、文書情報管理は二の次になってしまいがちです。だからこそ、今回の取り組みがいかに会社にとって重要なのか、オーナーが常にメッセージを発信する必要があります。場合によってはにらみを利かせてもらうことが活動の成功のカギとなります。

また、推進体制のメンバーは実行力、指導力、影響力ある方に担ってもらう方が会社(組織)として本気度が伝わります。事務局も同様です。今回の文書情報管理推進の取り組みはどこまで本気に取り組むべきか、周囲の社員に見られていることを意識しましょう(図3-3)。

図3-3 推進体制の構築(移転時推進体制の例)

 

3-5.スケジュールと役割の明確化

スケジュールを立案する際は、まずゴールを決めた上で、実現するために必要な作業項目を洗い出します。一般的には計画フェーズがそれに当たります。

大きな進め方の流れは次のような作業項目になります。

1.現状認識(意識調査・現状調査)
2.目的・目標・スケジュール・推進体制と役割の確認の場(キックオフの開催)
3.対象部門のメンバーへの文書情報管理教育
4.不要文書の廃棄活動
5.紙文書のファイリングシステム構築
6.電子文書管理の構築
7.維持管理の仕組み

この作業項目を、ゴールの設定から逆算して大まかなスケジュールを引きます。
それから実現可能なスケジュールかどうか確認し、対象範囲及び作業項目を見直すとよいでしょう(図3-4)。

図3-4 スケジュール立案の例

 

以下、それぞれの工程について詳しく述べていきます。

1)現状認識(意識調査・現状調査)

自社及び自部門での現状がどのような管理状況になっているのかメンバーに理解してもらうために、現状を可視化ます。例えば現状の写真を撮っておくことで、実施後にビフォア/アフターの比較が視覚で確認できるうえに、トップへの報告にも使えます。

そのほかにも、現状の認識するにはいくつかの方法があります。

一つ目は社員の文書情報管理に対する意識のアンケート調査です。

二つ目は紙文書の場合はオフィス内のキャビネットに入っている書類や物品などの現状調査。必要があれば、書庫や個人机、外部倉庫まで調査します。電子文書の場合についても、ファイルサーバー内のフォルダー体系やファイルのネーミング、重複文書の状況などを調べます。使用している文書管理システムの調査も可能な限り行いましょう。

三つ目はヒアリング調査です。現物の管理状況だけではわからない部分について、聞き取りを行います。

いずれの方法でも、調査の項目は文書情報管理のテーマによって変わります。病院の診察と同様に、問診だけでは真の症状は見つかりません。原因解明のために精密検査を行い、治療方法を検討するプロセスが必要です。

2)目的・目標・スケジュール・推進体制と役割の確認の場(キックオフ)の開催

事務局で目的、目標、スケジュール、推進体制と役割が整ったら、推進体制のメンバー全員で共有する場を持ちます。

なるべく全員が参加できる日程を調整しましょう。
特に推進体制のオーナーが参加できる日を最優先する必要があります。なぜなら、オーナーから今回の取り組みの重要性を参加メンバーに伝えてもらう必要があるからです。

この錦の御旗があるかないかで推進事務局が迷走した際に軌道の修正がかけられるかどうかが違ってきます。

3)対象部門のメンバーへの文書情報管理教育

文書情報管理教育を受けた人、または知識を持っている方は、社内でも本当に少ないのではないでしょうか?

実施の際に必要な最低限の知識を習得するためにも、外部の専門的な講師を招き、研修を実施したほうがよいでしょう。

ただし、社員全員に教育を実施する日時を調整することは、現実的に厳しいことが考えられます。最低でも推進体制のメンバーに展開すること考えると、キックオフと合わせてプログラムするのが最適です。

社員全員への教育は、文書情報管理ルールを作った後に何回かに分けて実施するか、キックオフ時の研修をビデオに撮影しておいて配布することをお勧めします。

4)文書管理規則の制定・改訂

管理規則類には、全社レベルの視点で作成する視点と、部門レベルで具体的に策定する視点の二つが必要です。

全社レベルで制定する規則には「文書管理規程」「文書管理細則」「文書保存年限表」「情報セキュリティ規程」「個人情報管理規程」など大原則のものと、規程を解説・補足説明する「ガイドライン」があります(図3-5)。

図3-5 文書管理規則の考え方

 

規程類がすべてそろっていたとしても、近年のセキュリティの意識の高まりから、他の規程との整合性が取れていないケースが多く見受けられます。部門や部署の実態に合った、現場レベルで運用できる利用手順書やルールブックのようなものがないと、実際に現場まで浸透させることはできません。

5)不要文書の廃棄活動

オフィスにある不要な文書の廃棄は計画性が大切です。
「廃棄デー」などを作って全員で作業する時間を持ちます。

用件が済んだもの、2部以上保管しているもの、陳腐化しているものなどの具体的な文書の例示した廃棄ガイドを作成して大まかな基準作ることにより、現場での作業をスムーズに進めることができます(図3-6)。

図3-6 そろえておきたい手順書

 

また、機密文書の廃棄の取り扱いや、廃棄の分別作業も、廃棄手順書などで具体的な進め方を現場に指示しましょう。

6)紙文書のファイリングシステム構築

ファイリングシステムは以下の手順で構築していきます

1.ファイリング用具の選定
2.文書を束ねる(同一種類にまとめる)
3.ファイル作業(ファイリング用具に収納する)
4.表示作業(ファイリング用具に表示する)
5.配列作業
6.ライフサイクルの設定(文書リストに保存期間を記載)
7.ファイル基準表の作成(何をいつまでどこに保管するか、ライフサイクルを管理する台帳)

・どの文書がどこに保管されているか(所在管理)
・オフィス内、倉庫にいつまで保管するのか(年限管理)
・文書を廃棄したら廃棄日と廃棄責任者を記載

7)電子文書管理システムの構築

ファイルサーバーの中がごみ箱状態になっていませんか?
ファイルサーバーのフォルダーの階層が8以上階層になっている、同じ名前の重複ファイルが多く存在している、フォルダーに個人の名前が付いているなど、思い当たる点があれば危険信号です。

電子文書はルールがないと紙文書以上に探すことが困難になります。最近はPCで作成した文書の格納先としてファイルサーバーや文書管理システムを導入されている企業も多く、ますますその傾向は高まっていると言えるでしょう。

策定しておくべき電子文書管理のルールには、以下のようなものがあります。

・ネーミングルール
・フォルダー体系のルール
・アクセス権
・保管年限
・版管理
・紙文書の電子化(スキャン文書登録)

8)維持管理の仕組み

プロジェクト等の推進体制を作って、文書情報管理の進め方を説明してきましたが、なんといっても維持管理の仕組みはとても重要です。

プロジェクトが解散すると、文書の管理状況はすぐにリバウンドしてしまいます。
そのためには最低1年に1回は、決められたルール通りに文書情報管理ができているかどうかモニタリングできる仕組みを導入するようにしましょう。

取組時と同様に課・グループに文書情報管理担当者を置くような推進体制を作り、オーナーは自部門であれば部門長に、全社であれば管理部門の役員になってもらいます。
ここでも、トップの理解と支援が重要となってきます。

また、点検活動には部門間でのクロスチェックを導入するとともに、管理職を巻き込んだ点検を実施します。
継続するためにもイベントとして楽しく実施するのもポイントの一つです。

文書情報管理を企業の文化にするためにも10年間継続するつもりで取り組んでいただきたいと思います。