2-1.文書情報マネジメントとは

プロローグでも述べた通り、今日の企業や組織の活動において、文書情報は増える一方であり、文書管理の必要性は高まっています。この文書管理を体系化したものが「文書情報マネジメント」です。

JIIMAでは「文書情報マネジメント」を次のように定義づけています。
「文書情報を真正に維持、保存、廃棄及び長期保存する組織的な運用。文書情報の作成・取得段階から、保管・保存・再利用・廃棄までのライフサイクル全体を通じて、確実かつ効率的に管理するための手段として、構造化データ、非構造化データを問わず、ハード・ソフト・コンテンツを機能的に組み合わせ、目的に応じて文書情報を有効に活用できるようにする」。(JIIMAビジョン2016

この項では、文書情報マネジメントの基本となる考え方について紹介しています。

2-2.文書のライフサイクル

文書情報マネジメントにおいて重要となるのは、「文書のライフサイクル」という考え方です。「文書のライフサイクル」とは文書情報を取り扱う一連のプロセスを定義づけたもので、大きく分けて「作成・発生(入手)」「処理」「保管」「保存」「廃棄」の5つのフェーズに分かれています。

図2-1 文書のライフサイクル

 

この5つのフェーズを文書管理規程などに従って、適切に管理していくことを文書のライフサイクル・マネジメントと呼びます。

文書ライフサイクルの5つのフェーズ
1)作成・発生

文書情報を作成、入手するフェーズで、管理規程などによる分類や作成(入手日)、作成者、キーワードなどのプロパティ情報を付ける。

2)処理

文書情報の目的に応じて、承認決済、公開、配布などの処理を行うフェーズ。このフェーズでは、文書のアクセス・コントロールに関する情報や改版履歴、処理履歴などのプロパティ情報が追加される。

3)保管

必要に応じて文書情報をすぐに参照できる状態にしておくフェーズ。一般的には処理フェーズの後、数か月から1年間ぐらいの比較的参照頻度が多い期間とされる。このフェーズでは、保管期間、保管場所、参照履歴などのプロパティ情報が追加される。

4)保存

保管期間を終えた文書情報を、文書管理規程などで定められた期間、保存するフェーズ。このフェーズでは、保存期間、保存場所、参照履歴などのプロパティが追加される。

5)廃棄

文書管理規程などで定められた保存期間を終えた文書情報を、ルールに基づいて廃棄するフェーズ。ただし、文字通りすべてを廃棄するのではなく、本当に廃棄してよいものと、保存期間を延長して保存を続けるもの、さらには永久保存の対象として、公文書館や史料室(企業の場合など)などに移管するものをこのフェーズで判断し、適切に処理を行う必要がある。

2-3.ファイリングとレコード・マネジメント

文書情報を整理し体系化して管理することを「ファイリング」とよび、文書ライフサイクルにおいては、主に保管・保存・活用・廃棄のフェーズが当てはまります。

ところで、これまで日本では「文書(document)」と「記録(recode)」を明確に区別せずに使ってきましたが、品質システムを定義したISO9001などでは、記録を「達成した結果を記述した、または実施した活動の証拠を提供する文書」として定義しています。
このように事実を記したものである記録は、文書のように内容を変更することができません。もし、修正を行う場合は、決められたルールに従って行う必要があります。
また、管理も文書とは異なり「レコード・マネジメント」という考え方で行います。このレコード・マネジメントは記録管理の国際規格ISO15489-1で規定されています。

2-4.文書情報マネジメントの対象となる文書・記録

文書管理マネジメントの対象となる文書・記録は、大きく分けて次の5種類の文書・記録が該当します。

法定保存文書

法律で保存が義務付けられた文書で、保存期間が決められているので、最も取り扱いに注意が必要です。全業種に該当する税務関係書類や、労働関連の書類のほか、業種や設備によって適用される法律関連書類もあります。
法改正などで保存対象となる文書や保存期間が変更される場合もあるので、その点も注意が必要です。

また近年、通称「e-文書法」により、一部の書類を除いて、紙の書類をスキャナでイメージデータとして取りみ、電子化データとして保存するスキャナ保存が認められるようになっています。

法定文書の例(共通文書)
業務 文書の種類 法令名
経理 取引に関する帳簿書類
(見積書、納品書、請求書、契約書、領収書など)
法人税法126条1項
人事 雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿、給与台帳等) 労働基準法109条
総務 株主総会議事録・総会議事録の謄本 会社法318条2,3項
法定文書の例(金融業)
業務 文書の種類 保存責任者 法令名
営業 保険の申込書(申込書は、取引に関する帳簿書類である) 保険業者 法人税法126条1項
当該外国銀行支店に係る外国銀行または外国銀行持株会社に係る営業の概況並びに貸借対照表及び損益計算書 銀行業を営む外国銀行支店 銀行法施行規則19の2条4項
契約条件変更書 保険業の変更会社 保険業法225の3条1項
経理 債務者ごとの業務に関する帳簿
(賃金元帳、預金元帳)
貸金業者 貸金業の規制等に関する法律19条
信託受益権販売業務に関する帳簿書類 信託受益権販売業を営む金融機関 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律4条3項
全国連合会の発行する債券の原簿 全国連合会の理事 信用金庫法54の10条1項

(「文書の電子化・活用ガイド」経済産業省 2006年7月)

 

記録が必要な基準

主にISO9001(JIS Q 9001:品質マネジメントシステム)やISO14001(JIS Q 14001:環境マネジメントシステム)、ISO27001(JIS Q 27001:情報セキュリティマネジメントシステム)など、法定ではありませんが、事業活動において取得が推奨されている国際基準・認証では、管理体制や活動実績などを文書化した情報の保存が義務付けられています。

営業秘密

企業活動における経営戦略や顧客、営業、技術、管理情報など、自社の事業にかかわる独自の情報です。営業秘密は不正競争防止法第2条第6項で以下のように定義されています。

1) 秘密として管理されている「秘密管理性」
2) 生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報「有用性」であって、
3) 公然と知られていないもの「非公知性」
(「営業秘密管理指針」経済産業省)

説明責任のための文書

金融商品取引法の一部(通称:日本版SOX法またはJ-SOX法)により、内部統制強化が求められるようになりました。内部統制が機能し、不正が行われず、組織が正しく運営されていることを証明する文書は、説明責任(アカウンタビリティ)を担保するものとして、適切な管理のもと保存することが大切です。

自衛のための保存文書

製造者責任(PL)法に関連する製造・加工・出荷・販売などの記録や品質管理データ、BCP(事業継続計画)のために必要とされるバイタルレコード、技能の伝承や様々なノウハウなどを次世代に受け継ぐために整備されるナレッジマネジメントなど、法律などで義務付けられてはなく、通常は使用しないが、何かあった時のために保存しておく文書。裁判で訴えられた時や災害発生時など、緊急時に対応する文書で、適切な形で保管・保存しておく必要があります。

2-5.eディスカバリーへの対応

「eディスカバリー制度」はアメリカの民事訴訟規則で決められた制度であり、アメリカで訴訟を起こされたときに、関連した文書を網羅的に提出(開示)することが求められるものです。

文書提出の期限は短く、この間に提出できなければ、弁論時間の短縮など懲罰的な制裁を科される場合があります。また、後から不利な書類が見つかった場合は、故意に隠したと認定される危険性もあります。

これを防止するためには、保存している情報は、紙であれ電子であれきちんと分類して整理し、いつでも提出できるようにしておくことが大切となります。