小規模事業者向け ペーパーレス化へのヒント ~電帳法 電子取引データの検索を参考に考えましょう。~

 今回は、小規模事業者様向けの記事です。小規模企業ではIT投資予算が限られている中、業務に必要な対応を行っていく必要があります。

 ペーパーレス、ノーペーパーのデジタル化の流れですが、デジタルの世界では、その文書の見つけやすさ、検索の仕方が紙とは大きく変わってくることに留意が必要です。

 紙ならば、紙面さえ見えれば探している情報と関係ありそうかどうかがわかりますし、さらにはパラパラとめくってある程度は把握ができます。

 一方、電子ファイルは外見上からは中身がわかりません。せいぜいファイル名、アプリケーション、容量、登録日くらいです。中身を見るには、ファイルを開いて確認する必要があります。文書を探すときに、いちいちファイルを開きながら探すということでは、時間がかかって仕方がありません。そんな状態だとしたら、文書を保管しているというよりも電子ファイルを物理的に保有しているに過ぎず、「文書を持っていない」に等しいと言わざるを得ません。

 そのため電子ファイルの場合は、検索しやすくする準備作業が重要です。一旦準備が整えば、その検索性能は紙に比べれば格段に高くなります。

 そこで、この準備作業について皆さんがご存知の改正電子帳簿保存法や電子取引データ保存の簡易な方法を参考にして考えてみます。国税庁からは、以下の2つの方法が例示されています。

①規則的なファイル名を付す方法

②表計算ソフト等で索引簿を作成する方法

 電子帳簿保存法では、「日付」「金額」「取引先」で、検索できることが必要とされています。サンプルを下図に示します。

1.テクニカルスキル面

②の方法では、EXCELの表計算ソフトを使えることが必要ですが、①の方法ではEXCELの知識は不要です。だからと言って、必要スキルレベルが低いということだけで、①の方式で進めるがよいのでしょうか。入力の手間・確実や検索性についても考えてみます。

2.入力の手間や確実性

(1)①の方法の場合の手順

・取引データのファイルを開けて、

・「日付」「金額」「取引先」を確認し、

・それをメモしてから

・ファイルを閉じます。

・その後、メモを見ながら、

 ファイル名に、「日付」「金額」「取引先」を付記します。

・これを登録する取引データがなくなるまで繰り返します。

この”「日付」「金額」「取引先」をメモする、それをファイル名に付記する”という作業は極めて効率が悪く、またミスも起こしがちです。さらには取引先を都度入力するので、記載揺れが発生し、検索精度の低下を引き起こしてしまいます。

2)②の方法の場合の手順

・索引簿のEXCELを開けて

・次に使用する追番を確認します。

・その後、登録するファイル名の先頭に追番を順次(例えばE22001_等)付加します。

・追番の順にファイルを開けて、

・「取引日」「取引先」「取引金額」を確認して、索引簿に入力していきます。

 取引先は選択式とします。

・全てのファイルの登録が終わったところで、索引簿のEXCELを閉じます。

 この方法では、①に比べて作業が効率的でミスも少なく、取引先については選択式にすることで表記揺れを確実に防ぐことができます。

3.検索性

 ①の方法では、Windowsのエクスプローラーの機能範囲での検索となり、複雑な検索や範囲検索などはできません。一方、②の方法では、EXCELの機能の範囲での検索が可能で範囲検索を含めて複雑な検索が可能であり、①の方法に比べて断然有利になります。

4.まとめ

 電子ファイルで素早く検索する場合には、①の方法、②の方法いずれかを準備する必要があります。②の方法はEXCELの知識が必要となるものの、登録効率性、確実性、検索性が高まるので、利用をお勧めしたいと思います。EXCELの知識を持たない職場においても、この機会にスキルを身に付けることで、今後の効率的な作業に大変有効となります。

 なお、①の方法は手作業では効率が悪いですが、自動化するツールが利用できる場合もあります。

 いかがでしたでしょうか。  文書情報マネジメントの基礎知識を使って、業務の効率化を行いませんか。