4-1.不要な文書を蓄積させない「文書整理術」

キャビネット、ファイル棚、机上に紙文書があふれてきたので「文書削減キャンペーン」を実施する、ファイルサーバーの維持費用や課金費用がかさんできたので「ファイルサーバー内文書の削減キャンペーン」を実施するといったことはあると思います。

このような際に、「あまり見なくなった文書は捨てましょう」。「保管場所のスペース・容量は限りがあるので、そこに収まるよう捨てましょう」。というアプローチになってはいませんか。

使えるもの、再利用できるもの、再利用できないものが混沌とした「ごみ屋敷」の状況であるにも関わらず、ここに削減目標だけを与えてしまうと、次のような課題が上がってきます。

・必要な文書まで捨ててしまう。
・削除対象文書とを見つけ、削除すべきと判断るのに多大な時間を必要とする。

このような問題を引き起こさないためには、文書削減に先だって適切な管理をしておく必要があります。
適切な管理とはなにか、まずは、基本中の基本と言える三つのルールを紹介します。 

【基本ルール1】組織の記録と属人的な記録の保管場所を分ける

「組織の記録」とそれ以外の記録を識別し、保管場所を分けることで、「組織の記録」を適切に管理します(図4-1)。「組織の記録」は、「法定保存文書」、「訴訟対応の文書」または「組織内で利用する文書」の性格を持ち合せた文書です。


図4-1 組織の記録と属人的な記録は分ける

「法定保存文書」は法律で保存義務が課せられている文書です。一つの文書が複数の法律の保存対象になることがあり得ますので、法律ごとに保存義務期間や保存条件が異なることに留意が必要です。

「訴訟対応用文書」は、法律では、保存義務は課せられていませんが、訴訟を起こされたとき、もしくは訴訟を未然に防ぐための証拠提出または説明責任を果たすために必要となる文書です。

「組織内利用文書」は、組織活動の記録そのものです。製造業における製造図面のように、誰が見ても組織の記録と認められるものから、検討資料のように組織によって判断が分かれるものも含まれます。この判断基準を組織内できちんと共有しておくことが重要です。

【基本ルール2】保存期間を設定する

「組織の記録」の文書ごとに、必ず保管期限を設定します。

「属人的な記録」にも保存期限を設定しますが、最大1年間程度と限定的にするのが望ましいでしょう。特に米国のeディスカバリー法で訴訟を起こされた場合に、特段の管理対象になっていない記録は裁判でのリスクを高めてしまうので、属人的な記録の保存期限は厳格に守ることを推奨します。

各文書には保管期限を設定し、ファイル基準表に、その「起算日」と「保存要求根拠」を記録しておきます。「起算日」の例には作成日、登録日、帳簿閉鎖の日、契約締結日などが、「保存要求根拠」には、法律条文、時効、社内規則、社内手続きなどがあります(図4-2)。

図4-2 「組織の記録」には必ず保管期限を設定

 

【基本ルール3】定期的に廃棄作業を実施する

「仏作って、魂入れず」では保管期限を設定しても意味をなしません。必ず定期的(少なくとも半年または1年に一度)に、設定した保存期限に沿って廃棄作業を実施します。

思いついたように行われる「文書削除キャンペーン」では、効果も少なく定着もしません、根気強く続けることが必要です。

 

4-2.文書の利用価値を向上させる活用する技術

文書活用を向上させる電子化のメリット

文書のライフサイクルは、「作成・発生・受領」、「処理」、「保管」、「保存」、「廃棄」の5つのフェーズから成ります。

「保管」フェーズは、必要に応じ速やかに参照することが必要な状態です。すぐに参照する必要がなくなった場合は、保管コストの低い「保存」フェーズに移ります。紙文書の場合は外部倉庫に移す、電子文書の場合は保管コストの低いストレージに移すといった処理を行いましょう。

文書の活用は、主に保管フェーズにて行われますが、磁気ディスクのようなオンラインストレージを使用すると、「保存」フェーズでも紙文書の場合に比べて比較的短時間で参照できます。

文書の活用にはアクセス時間が短いことが必要です。紙文書もスキャニングして電子化することで、活用しやすくなります。

経緯文書も保管する「ケース指向電子管理」

従来は処理をした最終結果を保管するという形態が一般的でしたが、これからは、最終結果に至る経緯文書(最初から最後まで)もひとつのケースファイル保管する「ケース指向電子管理」を行うことによって、文書の利用価値を向上させることが必要になってくるでしょう。

契約書の審査を例に「ケース指向電子管理」見てみましょう。
これまでは、最終結果の契約書と決裁文書だけを保管していました。これに対して、経緯文書には、契約審査・交渉過程の最初である「契約書原案」と「契約主旨説明書」、契約書原案に対する法務部他の部署からの「指摘事項一覧」、契約先とのeメールなどによる「交渉記録」、「指摘への対応結果まとめ」、「決裁文書補足説明書」などがあります。

特に「決裁文書補足説明書」は、決裁者が説明責任を果たすために有効であり、「指摘への対応結果まとめ」は契約原案を作る際に有効です。

契約は通常、甲乙どちらかが有利になるようになっています。交渉経緯がわからないと自ら進んで、相手有利の契約書を作成してしまうので、注意が必要です(図4-3)。

図4-3 契約書の「ケース指向電子管理」(例)

 

4-3.文書情報管理で知っておきたいポイント

「文書を削減する」に役立つ技術
1) 保存期限管理

・紙文書

紙文書を束ねたファイル(バインダー)の背表紙に、保存期間、廃棄予定年月を記入します。
さらに、ファイル基準表(ファイル管理表)は、表計算ソフトなどを利用し、保管期限を迎え廃棄候補となったファイルのリストを出せるようにしておきます。紙文書の管理ソフトの多くはこのような機能を持っています。

・電子文書

文書管理ソフトの多くでは、文書ごとに保存期限を設定する機能を有しています。
保存期限を迎え廃棄候補となった電子文書のリストについても、文書管理ソフトが機能を有しているか、アドオンで簡単に管理ツールを作成できるインターフェースを提供されています。
また、ファイルサーバーそのものには保存期限設定の機能はありませんが、サードパーティー(他社のOSや機器などに対応する製品を作っているメーカー)から保存期限設定、保存期限を迎えた廃棄候補となった電子ファイルリストを出力するツールが提供されています。

2) 電子化

紙文書をスキャニングして電子ファイルにするのが電子化です。
電子文書保管の「保管コスト」、「保管スペース」、「検索コスト」は紙文書保管に比べ格段に割安になるのがメリットです。
どの紙文書を電子化するかは、「電子化コスト」と削減できるコスト、特に「検索コスト」との比較が重要になってきます。

また、電子化においては、スキャニングした結果の電子ファイルにスキャニング漏れ、ページ折れ、文字つぶれなどがないか、その品質をチェックすることが必須です。JIS Z 6016「紙文書およびマイクロフィルの電子化プロセス」では、電子化プロセスの仕様を示しています。

3) 削除候補電子ファイルのピックアップ

削除候補となる電子ファイルをピックアップします。その抽出方法には次のようなものがあります。

・一定期間アクセスがない
・一定期間更新されていない
・保管期限が切れている
・データ容量の大きい
・中身が同じ(重複している)
・ファイル名が類似している
・業務と無関係な動画・音声ファイル

4) 保管委託

活用を終えた紙文書を事務所で保存するのではなく、専門の業者に委託することで「保管コスト」を低減できます。さらに、次のようなメリットもあります。

・災害からより安全に守る
・紛失・盗難を防ぐ

委託先の選定については、サービスレベルや契約条件を確認する必要があります。JIIMAでは「JIIMA文書情報マネジメントセンター サービス・ガイドライン」(PDF)を提示していますので、参考にしてみてください。

「文書を活用する」に役立つ技術
1)全文検索

企業内のファイルサーバーに分散した文書を、全文検索のような検索エンジンだけを利用しても、なかなか必要な文書を見つけ出すことができません。これには二つの理由があります。一つは、多数の文書がヒットして絞り切れないため。もう一つは、そもそもセキュリティの関係上重要な文書は検索の対象になっていないためです。

対策としては、属性(メタデータ)検索を併用する、他部署に見せても構わない有用なものは部外秘にしない、などの方策があります。

2) 属性検索

必要な文書を絞り込むには極めて有効ですが、属性検索で利用する属性を各文書に「設定」するのに手間がかかることが課題といえます。

3) 属性設定

文書管理システムには、属性設定機能を持つものが多くあります。また、ファイルサーバーについてもサードパーティーから属性設定ツールが提供されています。
属性設定については、次の方式があります。

・属性情報手入力
・属性情報選択式
・ファルダ―単位での初期値設定
・登録するファイルから自動属性抽出
・業務システムからの属性紐づけ

4)仮想フォルダー

ファイルにひも付いた属性情報を用いて、利用者ごとに見たい視点のフォルダー構造で表示する方法です。

5) 配布統制

文書管理システムやファイルサーバーから文書を取り出してメールに添付したり、システムからダウンロードした電子文書の操作(閲覧/編集/印刷等)したるすることを制限できます。
また、閲覧期限も制限できます。

 

文書情報管理で注意すべき事項
1)アクセス権管理

「アクセス権の設定を義務付ける。」とする規則では、設定された状況を定期的に確認することまで必要です。

2)鍵のリスク

「(秘)文書は、施錠できる金属製の保管庫で管理する」規則を設定しても、個人任せの管理では次のリスクがあります。

・鍵を複製される
・鍵の保管場所を知られる
・必要な時に鍵を見つけられない

3)印刷物の放置

サーバーを強固に守っても、印刷物をコピー機、プリンターに放置すると情報が漏えいします。

4) 裁判での証拠

次の考え方は迷信です。

・赤い印鑑が押された「原本」しか証拠にならない
・電子メールは証拠にならない

5)クラウドに預けた文書

クラウドに預けたデータも、システム障害で消失することがあります。少なくともバックアップは必要です。また、バックアップデータは遠隔地保管されていることがの望ましいでしょう。