朝日新聞2011年(平成23年)1月20日夕刊
「マイクロフィルム 劣化で読めず」記事について

2011年1月28日

社団法人日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)
専務理事 長濱和彰

朝日新聞の1月20日夕刊のトップ記事で「白い粉・酢酸臭・・・まるで『酢こんぶ』  図書館資料ピンチ」とのセンセーショナルな見出しで、マイクロフィルムの劣化が報道されました。JIIMAの新規会員やナレッジ会員の皆様には、全国版社会面の右7段抜きの大きな記事として掲載されたため、驚かれたり、ご心配されたりしたのではないかと思います。誤解が拡大することを避けるために、当協会に対する取材の経緯を含め報告致します。

1.記事の要約
「マイクロフィルムの劣化が各地で問題になっている。酢のようなにおいを放ち、ワカメのようにゆがんでしまう『ビネガーシンドローム』。図書館などでは劣化を遅らせる工夫をしたり、新しいフィルムに複写したりするなど対応に追われている。」との刺激的な書き出して、西山貴章記者の署名記事が始まります。著作権の関係で全文掲載はできませんが、@京都の私立大学図書館では2千本を超えるマイクロフィルムのうち約半分がビネガーシンドロームの可能性がある、A都内の私立大学では劣化を防ぐために専用の収蔵庫を設けている例もある、B劣化の進行の早い素材でできたマイクロフィルム(TACベース)はISOの期待寿命100年を待たず波打ってしまうことがある、C原因はフィルムベースが高温と多湿状態で加水分解するため、D大手フィルムメーカーでは80年代後半から問題化し始めたため93年には劣化しにくいPETベースに切り替えた、E業界団体では2年ごとの検査や複製フィルム化を勧めている、F劣化したフィルムの修復を手掛ける業者が京都にあり修復技術を特許出願中、との説明があり、記事の最後は東京大学の小島浩之氏の「保存状態を確認し、早く対策を取る必要がある」とのコメントで終わっています。
記事内容自体は、20年以上前に公表され対策が行われているTACベースマイクロフィルムの加水分解を取り上げたものであり、マイクロフィルムの利用者側である図書館や、製作者側であるJIIMA関係者にとって既成の事実の列挙にすぎないのですが、見出しやサブタイトルがきわめて刺激的で、流し読みされると、マイクロフィルムの保存性について誤解を生じかねません。
2.取材の経緯
朝日新聞大阪本社 社会グループの西山記者から昨年11月9日に保存中のマイクロフィルムの変質について、インターネットからマイクロフィルム業界団体であるJIIMAを知ったとして、事務局に電話取材がありました。JIIMAからは、古いTACベースのマイクロフィルムで保存環境によっては加水分解反応が生ずることは1987年頃に判明した旧知の事実で、朝日新聞でも1993年(平成5年)12月27日に記事化していること、JIIMAでは小冊子「マイクロフィルム保存の手引き」を図書館などの関係者に配布しているほか、JIIMAホームページでも「マイクロフィルムの知識」コーナーで詳細なセミナー資料を公表して、正しい保存と管理について啓発を行っていることを説明しました。
小冊子や古い新聞記事などの関連資料も西山記者に送付して理解いただいたと思ってたところ、本年1月18日に再び確認の電話取材がありました。西山記者からは京都に劣化マイクロフィルムの再生をおこなう専門業者があり成果を上げている様子であり、これは新たなニュース性があるので調査記事として掲載するとのことでした。以上がこの記事のため取材を受けたJIIMAの対応と経緯です。
3.改めて「マイクロフィルムの適切な保存について」
マイクロフィルムは適切な処理と保存環境下で使用された場合、期待寿命100年(TACベース)、期待寿命500年(PETベース)という長期保存が可能な優れた記録メディアです。
これを機会に、文書情報管理の専門家であるJIIMAの皆様も、マイクロフィルムの適切な保存について復習し、利用者の啓発に一層の努力をお願いいたします。
1. 保管中のフィルムは、温度・湿度・環境汚染などの影響や、水・光・カビ・虫・微生物などによる破壊、化学物質との接触などで異常現象を生ずることがある。
   
2. 異常現象には、変色・褐色・カビ・くっつきや膜面の剥離・ひび割れ・マイクロスコピックブレミッシュ*・TACベースの劣化に分類され、それぞれの現象により適切な処置が必要。</td>
   
3. 特にTACベースの加水分解については、高湿・高温・金属缶・金属リール・密閉容器の場合に進行が進むため、ISO/JIS保存条件(永久保存の場合;湿度15%〜40%、温度21度以下)で保存を行いつつ、2年ごとに抜き取り検査を行う。酢酸臭が出始めた場合は、放散処理を行い速やかにPETベースマイクロフィルムに複製する必要がある。その他、フィルム保管室には硫化性ガスが出ない建材を使用したり、フィルム包材にも中性紙を用いるなどの注意も必要。
*マイクロスコピックブレミッシュ;有害物質やガスにより現像銀が溶けて、黄色や褐色の微細な斑点がバックグラウンド部分に発生するもの。

詳しくはJIIMAホームページに掲載している「大切なマイクロフィルムのためにぜひ知っておきたいマイクロフィルムの保存の手引き」をご参照ください。

以上